私の師匠は沖田総司です【上】
「僕、天宮さんの所に行って謝ってくる」

「そうしてやれ」

気合を入れて立ち上がると、平助が血相を変えて走って来た。

「総司、斎藤君!大変でさァ!」

「どうしたの?」

「蒼蝶が部屋にいないんでィ!」

あたふたと慌てる平助に向かって一君が冷静な声で言った。

「散歩じゃないのか?」

「散歩?」

「ああ、天宮は新選組内で唯一の女だからな。男だらけで息が詰まるだろうから、局長たちが息抜きの散歩を許可してるんだ。しばらくしたら帰って来るだろ」

「そっか……よかった」

平助が心から安堵した顔をした。

平助のその顔を見た瞬間、胸の辺りがモヤッとした。

……なんだろうこれ。

初めての感覚に少し戸惑う。そして無意識に足が歩き出していた。

「総司、どこにいくんですかィ?」

「天宮さんのところ」

「しばらくしたら帰ってくるぞ。何より、どこに行ったか分からないだろ」

一君の言う通りだけど、僕は少しでも早く彼女の所へ行って謝りたかった。

謝りたい……と言うか、早く会いたいと思った。
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