私の師匠は沖田総司です【上】
「だから、今日で最後にしましょう?」

私は龍馬さんの手を取り、その上に懐中時計を置きました。

これで終わり。後は、このまま屯所に帰るだけだ。

「さようなら、龍馬さん。今まで、ありがとうございました」

不意にもこの時、声が掠れそうになった。

本当は私だって最後にしたくない。

でも、これはもう変えられない。元々、龍馬さんと私は敵対関係にあるんだ。

いつか、離れる時が来ることは目に見えてる。

それが今だったと言うだけ。

「さようなら……」

私は立ち上がって、その場から逃げる様に走り出した。

後ろから私を呼ぶ声がする。

でも、私はその声に振り返ることなく走り続ける。

そして川原から離れた場所まで来ると、ずっと痛む胸を掴みました。

「っ……、うっ……」

溢れる涙を堪えながら、脳裏に浮かぶのは龍馬さんの悲しげな顔。

彼を傷付けてしまった。

傷つけたのは紛れもない私自身。

龍馬さんの存在が、こんなにも私の中で大きくなってるなんて、思いもしなかった。

涙がとまらない。胸が苦しい。

「師匠……」

この胸の痛みは、どうしたらいいですか……?
< 262 / 472 >

この作品をシェア

pagetop