私の師匠は沖田総司です【上】
ですが、新人の私が他の方たちを差し置いてお願いするのはいけませんね。

ここは大人しく最後尾で待っておきましょう。

私はルンルン気分で隊士たちの後ろに立ちました。

はやる気持ちを押さえながら順番を待ちます。

……しかし、随分静かですね。

稽古が始まっているなら、竹刀を打ち合う音がしてもいいと思うのですが、現在道場の中は水を打ったように静かです。

気になった私は人を掻き分けて前へ出ました。

そして、そこには信じられないような光景がありました。

1番隊の隊士達は気まずそうな顔をするだけで、誰一人と組長に打ち込まないのです。

一方組長は退屈そうに欠伸をしています。

「あの、どうして誰も組長との稽古を始めないのですか?」

隣にいた隊士に聞くと、その隊士は声を押さえて言いました。

「だって沖田組長の攻撃は本当に容赦がないんだ。あの人と一対一の稽古なんてしたら、どんな目に会わされるか分かったもんじゃないよ」

私は隊士の言葉に思わず唖然としてしまいました。

「ねぇ、誰も来ないの?来ないなら僕が名指ししてもいい?」

待つのに飽きたのか、組長がそう言うと隊士たちは私を残して一歩後ろに下がりました。

新選組1番隊の名が聞いて呆れます。

「組長、よろしくお願いします!」

誰も行かないなら行かせてもらいますよ。
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