私の師匠は沖田総司です【上】
そう言えば、平助と天宮さんってお互いを名前で呼び合うよね。

一方僕と天宮さんは?

天宮さんは僕を組長って呼ぶ。

……苗字ですら呼ばれてない。

よく考えたら組内で苗字ですら呼ばれてないの僕だけだよね。

何だか悲しくなってきたんだけど。

おそらく、天宮さんから僕の呼び方を変えることはないだろう。

僕から歩み寄らない限りずっとね。

「よしっ……」

僕は物陰から出ると、洗濯物を干すみんなの所へと向かった。

「あっ……!」

そして蒼蝶って呼ぼうとした瞬間、そこにいた全員が僕の方を見た。

そしたらもう蒼蝶って呼べなくなって

「天宮さん、僕も手伝う」

普通に呼んでしまった。

「手伝うならもっと早く来い」

一君、君は最初から僕の存在に気付いてたんだね。

「ありがとうございます、組長」

「うん……」

僕は籠に入った濡れた着物を手に取りながら、次こそはと思っていた。
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