私の師匠は沖田総司です【上】
追いかけるとすぐに土方さんの隣に追いつきました。

お互い無言のまま屯所から一歩外へ出ると、賑やかな京の町が目の前に広がりました。

「あの、土方さん」

「なんだ」

「ありがとうございます」

「ああ」

土方さんの返事はそっけなくて短いものですが、表情が書類書きをしている時よりも穏やかだったので私は嬉しかったです。

「で、何を買うんだ?」

「そうですね、とりあえず揚げ出し豆腐を作ろうと思っているので、お豆腐は買います。

土方さんは何が食べたいですか?お買い物に付き合ってくれるお礼に土方さんが食べたい物を作りますよ」

「おっ、だったら野菜の煮物を食いてえな」

「了解しました!」

敬礼のポーズをしたら土方さんに「何だそれ」と言われてしまいました。

それを適当に誤魔化した後、夕食に必要な材料を買いました。

土方さんが持つ籠の中は野菜でいっぱいです。

「すみません、重いですよね」

「別に構わねえよ。力仕事は男に任せとけ」

おおっ、土方さんの言葉が頼もしすぎます!さっきの言葉で土方さんへの好感度が上がった気がしますよ。

「後は豆腐だけか」

「そうですね。お豆腐屋さんはもうすぐです。…わっ!」

よそ見をして歩いたせいで人にぶつかってしまい、尻もちを着きました。

お尻がジンジンと痛みます。

「おいおい、何やってんだ」

土方さんが呆れたように言いました。

思わずムッとなってしましましたが、自分のミスなので言い返すことができません。
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