私の師匠は沖田総司です【上】
そうだ、それよりもぶつかった人に謝らないと。

「あの、ごめんなさい！私、よそ見してて……」

私はぶつかった人を見て胸の奥がざわついた。

だってそこにいたのは

「気にすんな、俺だってよそ見してたからな……蒼蝶？」

川原で別れた以来会っていない龍馬さんだったから。

龍馬さんが驚いた表情で私を見るけど、私は目を逸らした。

「天宮、おまえの知り合いか？」

「え、あの……はい」

土方さんが興味深そうに私と龍馬さんを見比べる。

よりにもよって土方さんがいる時に会うなんて最悪すぎる。

まだ土方さんが龍馬さんの正体に気付いてないのがせめてもの救いだ。

早く龍馬さんから土方さんを離さないと龍馬さんが捕まってしまう。

それだけは阻止しないと。

「あの、それじゃそろそろ行きますね。ぶつかってすみませんでした」

私は龍馬さんに軽く頭を下げてから、土方さんの手首を掴んだ。

そしてそのまま歩こうとしたけど、突然空いている方の手を掴まれてグイッと後ろに引かれる。

「ちくっと蒼蝶を借りるちや」

「え？わっ！」

龍馬さんが私の手を掴んだまま走り出す。

急に手を引かれた私は糸で引かれたように龍馬さんの後ろを走った。
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