私の師匠は沖田総司です【上】
「それにしても、蒼蝶」

「はい?」

龍馬さんがニヤニヤしています。龍馬さんがニヤニヤするなんて珍しいですね。

「いつまで俺の手を握ってるつもり?」

「え゛っ」

私は急いで繋がれていた手を見ました。そしたら龍馬さんの手はもう私の手を握っていませんでした。

だったらなぜ今も繋がれているのかと言ったら、私が龍馬さんの手を握っているからです。

「ごっ、ごめんなさい!」

私はすぐに手を離し、龍馬さんに背を向けました。

顔だけでなく耳までもが熱くてたまらないです。

それに、さっきから心臓が尋常じゃないぐらいドキドキしています。

このままこの部屋にいたら確実の寿命が縮む。

「私、帰ります」

背を向けたまま戸の取っ手に手を賭けた瞬間、顔の横にドンと手が置かれました。

「まだ帰んなや」

私はいつの間にか龍馬さんに壁際まで追い詰められていました。

至近距離で見下ろされ思わず身を竦めてしまいます。

俯いていると顔の横に置かれている手とは逆の手が、私の顔の横に添えられる。

そしてそのまま、大きい手が私の顔を上に向けさせました。

「っ……」

龍馬さんの端整な顔を正面から見たら胸が大きく跳ねる。

でも、やっぱり私は整った顔よりも強い意志を宿した目の方が好きだ。

この目で見つめられると目を逸らせなくなる。
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