私の師匠は沖田総司です【上】
しばらく、互いに見つめ合っていた私たちでしたが、不意に龍馬さんの頭が肩に置かれた。

そして、顔に添えられていた手が腕を滑り私の指を軽く握る。

「久しぶりに会えたんだから、もう少し一緒にいろよ」

私の手を握る力が強くなる。そして少し掠れた声が囁く様に言った。

「おまえが川原に来なくなってから俺は前ほどあそこにいるのが楽しくなくなったんだ。今までは空を眺めるだけで十分だったのに、今じゃ全然物足りない。

それに、理由は分からねえけど、おまえのことばかり考えてる。蒼蝶は俺と会う時間を国を変える為に使えって言ったけど、むしろ逆効果。有難迷惑なんだよ。

今の俺はもう昔の俺じゃなくなってる。俺がこうなったのは全部おまえのせいだぞ。どう責任とってくれんだよ」

「いや、そんなことを言われましても……」

責任を取れと言われても、私にはどうしようもありません。

川原で過ごす時間が楽しくなくなったのは、話し相手だった私が川原へ行かなくなったせいかもしれません。

でも、私のことばかりを考えるようになったと言うのは、龍馬さん自身が解決するしかないと思います。

それよりも、私のことばかり考えるようになったなんて……。

「ん?どうして赤くなってんだ?」

「だって……」

純粋にそれが嬉しいと思ってしまうから。

私も龍馬さんのことばかりを考えてた。

稽古をしている時も女中の仕事をしている時も、ふと龍馬さんの事を考えている時があって、しばらく頭から離れなかった。

だから、龍馬さんも同じだったのかと思うと、心が通じ合っているようで嬉しかった。
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