私の師匠は沖田総司です【上】
師匠、泣かないでください
テレビの砂嵐のような灰色の映像が、視界に映る。

『どうして、どうしてですか……』

男性の声が聞こえた途端、砂嵐が少し治まり、馬と誰かの手元が見えました。

声の主の男性は馬に乗っているのか、周りの景色がすごい速さで前から後ろへと流れて行く。

不思議なことに、私にも馬に乗っている感覚をリアルに感じることできました。

どうやら私は、この男性の視界と感触を共有しているようです。

いや、視界や感触だけじゃない。

男性の気持ちも共有していました。

今、男性から感じるのは戸惑いと不安。

この人は、どうしてこんなに心が不安定なんだろう。

しばらくして、男性は一つの宿屋に辿り着きました。

『いくら追われていても、野宿とかしないんだ』

口元をほころばせながら男性は言うと、建物に入り宿屋の亭主に色々と説明した後、中に通されました。

そして一室に辿りつくと、襖の戸が開かれた。

そこにいたのは

『総司、やっぱり君が来てくれましたね』

微笑む山南さんがいました。

それにしても山南さんは、この男性を総司と呼んだ。

まさかこれって……。

『君がここに来た理由は分かっています。新選組を脱走した私を捕えに来たんですよね』
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