私の師匠は沖田総司です【上】
「天宮」

「……」

甘味屋から出てから、ずっと私は土方さんの呼びかけに無視していました。

顔を土方さんから背けながら、テクテクと山南さんの隣を歩きます。

「いい加減に機嫌直せ。謝るから」

「あっ、山南さん町が見えてきましたよ。あれが目的地ですか?」

「ええ、そうですよ」

「俺を無視するなよ……。わかった、俺がおまえを嫁に貰ってやるから機嫌直せ」

土方さん、どんな機嫌の取り方ですか。

それに、私は土方さんのお嫁さんになるのは、真っ平ごめんです。

それからも土方さんを無視続け、町の中に入ると、山南さんが言いました。

「家茂公の警護は明日ですし、早めに今夜泊まる場所を探して休みましょうか」

「そうですね、山南さん」

「あからさまに山南さんの名前を強調するなよ」

ふんっ、土方さんはしばらく無視の方向ですよ。

それから、私たちは今夜泊まる場所を探しました。

でも、多くの旅籠(宿屋の事)は満室で、なかなか泊まる場所が見つからない。

そして空が薄闇色に染まる頃、ようやく泊まれる場所が見つかりました。

……三人相部屋ですがね。
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