私の師匠は沖田総司です【上】
師匠の腕の中で首を横に振る。

「私は山南さんの未来を変えることが、負担だとは思っていません。

だって、私も山南さんが大好きだから。大好きな人の悲しい未来を変えたいと思うのは、当然です。でも……」

私は師匠の背に回した手に力を込め、胸板に顔を埋めた。

「結局、山南さんは左腕に怪我をした。そして、師匠の刀も折れてしまいました」

『刀のことは気にしなくていいよ。あれは、蒼蝶を守る為にあげたものだからね。

山南さんのことはしょうがないって、本当は言いたくない。でも、起きてしまったことを、変えることはできない。……受け入れるしかないんだ』

「師匠……」

『ほら、泣かないで。蒼蝶は頑張ってくれたよ。僕はそれで十分だから』

師匠が着物の袖で涙を拭いてくれる。師匠の顔は笑顔だった。

でも師匠、気付いていますか?

私よりも、師匠の方が悲しそうなんですよ。

私に悲しい顔を見せないために、無理に笑顔を作る師匠を見たら、胸が締め付けられるように痛い。

本当は今でも山南さんの未来を変えたいって思ってるんだ。

……諦めたくない。

師匠の為にも、自分の為にも諦めたくない。

身体を離すと、袖でグシャグシャに顔を拭いた。

私のいきなりの行動に、師匠が目を真ん丸にしていました。
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