私の師匠は沖田総司です【上】
パンパンと両頬を挟むようにして叩いた後、私は師匠を見た。

「私は、諦めません。山南さんの未来を変えます」

『方法はあるの?』

「……分かりません。でも、方法はきっとある筈です」

「きっと」なんて言ったけど確信なんてない。

もしかしたら、山南さんの未来は変わらないのかもしれない。

でも、私は諦めたくない。

決まった運命だとしても、私はその運命に抗う。

「師匠は何も心配せずに待っていてください」

私は師匠を安心させるように微笑んだ。

『……分かった。蒼蝶に任せるよ。でも』

二つの大きくて冷たい手が私の顔を挟むと、額に、やわらかいものが当たった。

それが師匠の唇だと分かると、顔全体から発火するじゃないかってぐらい熱くなる。

「しっ、しし師匠!?」

慌てて離れようとした瞬間、師匠の身体が透けていることに気付いた。

足から徐々に消えている。

『蒼蝶、さっきみたいに我を忘れて刀を振るわないで。無理したらダメだからね』

「はい」

『約束だよ』

もう一度、私の額にキスをすると同時に、師匠の身体は完全に消え、周りを飛んでいる無数の光の珠になった。

そして私の意識も遠くなり、もう一度目を覚ましたら、布団の中に寝かされていた。
< 373 / 472 >

この作品をシェア

pagetop