私の師匠は沖田総司です【上】
次の日。ジッとしていられなかった私は、紅葉の簪を持って玄関に来ていました。

草履の紐を結び、立ち上がると「おい」と後ろから声を掛けられる。

そこにいたのは土方さんでした。

「どこに行くんだ?」

「島原です」

「島原?」

私の口から出た場所が意外だったのか、土方さんが軽く目を見開きました。

「私の監視期間は終わったので、一人で外に出てもいいんですよね」

大阪の出張から戻ると、近藤さんから私の監視は終了だと言われました。

だから一人で外に出ても問題ない筈です。

「まぁ、確かにそうだが。どうして女のおまえが島原に行くんだ?」

「会いたい人がいるんです。そして、その方に渡したい物があります」

「……そうか。気を付けて行って来いよ」

「え!?」

土方さんが意外とあっさり許可をくれたので、思わず声が出てしまいました。

「なんで驚くんだよ」

「だって私、最近まで間者の疑いを掛けられていたじゃないですか。それで、土方さんがすんなりと、許可をくれたのが以外で」

すると土方さんは、首の後ろに手を当てました。
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