私の師匠は沖田総司です【上】
「ああ、なるほどな。それにはちゃんと理由があるんだ」

「理由ですか?」

「大阪で山南さんが斬られた時、おまえ本気で怒ってただろ?

その姿を見たら、おまえは本当に俺たちを仲間だと思ってるんだなって思ってよ。

あの時、普段のおまえからじゃ想像できない程の、怒り方だったんだぞ。

もし間者だったら、俺たちが斬られても、あれほど怒ることはできねえとだろうと思ってな。だから、俺もおまえを信用することにしたんだ」

「土方さん……」

「だがまあ。いくら調べても、おまえの出身地とかが分からねえのは不思議だがな」

「う゛っ」

土方さんの言葉に耳が痛いです。

調べても、私の情報が手に入らないのは当然のこと。

だって私はこの時代の人間ではないから。

この時代には私の父と母、それ以前に祖父と祖母も生まれていません。

「それは、その……」

モゴモゴと口籠っていると、頭に土方さんの手が置かれました。

そしてワシャワシャと乱暴に撫でます。

土方さんの手の動きに合わせて、頭がカックンカックン揺れますよ。

「あまり遅くなるなよ」

「あっ、はい。用が終わったらすぐに帰ってきます」

「ああ、約束だぞ」

土方さんは私の頭から手を離すと、手をヒラヒラとさせながら、どこかへ行ってしまいました。

私は頭を下げた後、屯所を出て島原へと向かいました。
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