私の師匠は沖田総司です【上】
賑やかな町を歩いていると、島原の唯一の入り口である門が見えてきました。

全体を水路に囲まれた島原は、町と隔離された、別世界に感じる。

門をくぐり、大きな道を歩く。

道には、私以外、誰もいない。

以前に来た時の煌びやかさもなく、辺りは静まり返っていました。

まるでゴーストタウンですね。

人がいるのか不安になってきます。

少しビクビクしながら道を歩き、角屋を目指す。

そして、『角』と書かれた暖簾を目印に、角屋に辿り着くことができました。

私はすぐにその暖簾を潜り、中へと入る。

「すみません、誰かいませんか?」

店の中に呼びかけると、女将さんと思われる中年女性が出てきました。

「どないしました?店はまだ開いていまへんけど?」

「ここに、明里さんという芸妓さんがいらっしゃいますよね。私、その方と話がしたくて来ました。

どうか、会わせて頂けませんか?」

すると、女将さんは極まりが悪そうに「うーん」と唸りました。

「お客はんが言う通り、明里はここの芸妓や。でも、会わせるのはちょっとな……」

「どうしてですか!?」

ついつい声を荒げてしまう。

女将さんはさらに、困ったような顔をしました。

「すみまへんな。身請けされとらん芸妓と、あんさんのような男性は簡単に会わせられへんのよ。それが規則やから」
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