私の師匠は沖田総司です【上】
重ねられたお膳を抱えて長い廊下を歩く。

先ほど女将さんにこの料理を運んだら、2階にある自室で休んでいいと言ってくれました。

疲れている時程「休んでいい」と言う言葉がありがたいです。

早く料理を部屋に運んで寝よう。

最後の力を振り絞って、石のように重いお膳を運ぶ。

ようやく部屋につき戸を開けようと手を伸ばしたら、戸が勝手に開きました。

「蒼蝶?」

すぐに上から懐かしい声がしました。そして見覚えのある着物。

まさかと思って顔を上げると

「龍馬、さん?」

数日ぶりにみる龍馬さんの姿がありました。

龍馬さんも驚いているみたいで、しばらく見つめ合っていると

「お嬢さんじゃねえか」

龍馬さんの背後からひょっこりとヅラさんが出てきました。

部屋の中を見てみると、稔麿さんと高杉さん、あと千代菊さんを含む芸妓さんが数人いました。

……ここは攘夷志士の宴会場でしたか。

「えーと、その、お料理お持ちしました」

「ああ、ありがとな。ほら龍馬、邪魔だからどいてやれ」

「ああ」

龍馬さんの横を通って部屋に入りました。
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