私の師匠は沖田総司です【上】
「それ、本気で言ってる?」

「本気で言いましたが」

余程私の発言がツボにはまったのか、しばらく組長は声を押し殺しながら笑い続けました。

私、変なことを言いましたかね?

首を傾げて考えますが、全く分かりません。

「天宮さん、あまり笑わせないでよ……!」

ワザとじゃありませんよ。組長が勝手に笑い始めたんじゃないですか。

「ああもう、天宮さんって本当面白いな……」

ひとしきり笑った組長は目に浮かんだ涙を指で拭いました。

でも、まだ笑いが込み上げてくるのか口元が緩んでいます。

「それ、外見はハマグリだけど中身は別の物なんだ。紐を外して開けて見なよ」

言われた通り紐を解いて上の部分を開きました。

中から出てきたのは赤い粘土のような物体。そして微かに薬の独特な臭いがしました。

「これはなんですか?」

「軟膏だよ。裏方の仕事で水仕事するでしょ?

昔、僕の姉さんが今の時期はあかぎれができて、水仕事が辛いって言ってたのを思い出したんだ。天宮さんも同じかもしれないと思って」

確かに仕事で食器洗いや洗濯などの水仕事をしています。

手には赤く割れたあかぎれが出来ていました。
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