私の師匠は沖田総司です【上】
「最後にもう一回」

再び組長が私をギュッと抱きしめました。

ちょっと苦しいです。

「天宮さん、あまり無理しちゃダメだよ」

「私、疲れた顔でもしてましたか?」

そういうのは気を付けていたんですけど。

すると、組長は少し考える様に唸りました。

「それもあるけど、何だか天宮さんは常に何か胸に抱えている気がしてさ」

組長の言葉に虚を突かれて体がピクリと跳ねた。

私が常に胸に抱えている事は組長の未来を変えられるのかという事。

「辛いときは言って。一人で抱え込まないでよね」

「組長……」

「じゃあね」

組長は私の頭を撫でると、背を向けて帰って行きました。

「一人で抱え込むな……か」

組長、一人で抱え込むなと言いましたが、私は胸に抱えている事を貴方には話さない。

話さないというよりも、話せない。

だって、私が話すには組長の悲しい未来について触れなければならない。

労咳を患い、新選組を離れて療養生活をする。

誇りである刀も振れなくなる。近藤さんの最期も知らないまま孤独に死を迎える。

そんな悲しい未来が待ってるなんて、知りたくないはずだ。

辛い未来が待っている事をわざわざ知る必要なんてないんですよ。

私は貴方の悲しい未来を変える為に来たんです。

組長、貴方は何も知らずに幸せだと思える未来を過ごしてください。

そして師匠の孤独の時間を無くしてあげてください。
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