私の師匠は沖田総司です【上】
師匠、私の部屋に住人が増えました
組長から頂いた軟膏が、半分程なくなった頃。
「寒い……」
あまりの寒さに浅い眠りから目を覚ましました。昨夜、火を点けた火鉢はすでに消え、炭は全て灰となっています。
かじかんで動かない手を必死に動かし、火鉢に新しい炭を入れて火を点けました。
すると、炭はすぐに鮮やかな赤色に染まり、パチパチと音を立てた。
「今日は冷えるな」
地球温暖化などが起きていないこの時代。
私がいた時代よりも、冬の寒さが厳しい気がします。
けど、今日は特に酷い寒さです。
火鉢に火を入れても、部屋が暖かくなりません。
夜着の上から厚手の羽織を羽織った後、部屋の窓を開けました。
外を見た瞬間、なぜこんなに寒いのか分かりました。
曇天の空からゆっくりと舞い降りる、無数の白い花びら。
雪が降っていました。
「通りで寒いわけだ」
しばらく、外を眺めようかと思っていた私ですが、窓から侵入してくる冷たい風に我慢できず、すぐに窓を閉じました。
冷蔵庫の中かと錯覚させるぐらい冷えた部屋で、夜着から小豆色の仕事着に着替える。
そして、小さな文机に置かれている軟膏を手に取って、少量を匙でこそぎ取ると火鉢で炙って溶かす。
それを紙の上に置いて手に塗っていく。