私の師匠は沖田総司です【上】
この軟膏はすごく効き目があって、あかぎれが綺麗に治りました。
この時代の薬の効果を甘く見てはいけませんね。
最後に鏡を見ながら髪を三つ編みに結った後、合された着物の襟を少しずらした。
龍馬さんに付けられた赤い印、いわゆるキスマークは跡形も無くなっていました。
キスマークがあった時は本当に大変でした。
龍馬さんはわざと着物で隠せない位置にキスマークを付けたんですよ。酷くないですか!?
だから三つ編みで隠していたのですが、人に見えない様に常に気を付けていなければならず、仕事に集中できない。
運悪く人に見られてどうしたのかと聞かれたら、寒い季節にいる筈もないけど「蚊に刺された」と言って誤魔化したり。
本当に大変でした。
この苦労話を印をつけた張本人に聞いてもらおうと思っていたのですが、龍馬さんは印をつけた日を境に、ぱったりと角屋に来なくなっていました。
仕事が忙しくて、角屋に来る暇が無いのでしょうか。
まぁ、龍馬さんは国を変えるという、とんでもないことをしようとしてますからね。
忙しくて当たり前です。
でも、やっぱり
「寂しいな……」
裏方の仕事の合間に、龍馬さんと話すことを楽しみにしていた私は、会えなくて寂しいと思ってしまう。
「今日は来てくれるかな」
微かな期待を胸に、今日も裏方の仕事を頑張ろう。