私の師匠は沖田総司です【上】
だったらさっきのは私の勘違いで、それよりも龍馬さんは私のことを可愛いって……。
あああっ!恥ずかしいけど、どっちで恥ずかしいかわかりません!
恥ずかしさのあまり、両手で顔を隠している間も、龍馬さんはクスクスと笑っていました。
しばらくして私の上から退くと再び窓辺まで行き、そこに腰を下ろしました。
「本当、蒼蝶は面白いな。このやり取りが今日までだって思うと残念だ」
「あっ……」
そっか。龍馬さん、今夜岡田さんと一緒に長州藩邸に帰るんだ。
龍馬さんとこの部屋で過ごすのも終わりか。そして私の裏方の仕事ももうすぐ終わる。
裏方の生活は大変だったけど、忘れられない思い出になりそうです。
「そうだ。まだ時間がある内に」
小さな箪笥の引き出しから裁縫箱と着物を取り出しました。
「あっ、俺の着物」
「はい。血が染み込んでてなかなか落ちなかったんですけど、ようやく綺麗になったんです。後は切れた部分を縫うだけなので、もう少し待っててください」
「本当、何から何まですまねえな」
「いえ、気にしないでください」
裁縫箱から針と糸を取り出して、切れた部分をチクチク縫っていきます。
針を指に刺さないように慎重に縫ったので、少し時間は掛かりましたが無傷で綺麗に縫うことができました。
ふっふっふ、私の裁縫のスキルが上がってますね。