私の師匠は沖田総司です【上】

夜になり、いつもより早く仕事を切り上げた私は、龍馬さんと一緒に裏口に向かいました。

「龍馬、蒼蝶ちゃんこっちこっち」

「岡田さん」

家の影から姿を見せる岡田さんのところに走りました。

岡田さんは着流しに腰に刀を差しています。

「龍馬。その襟巻どないしたん」

「蒼蝶から貰った」

「そうだったん。蒼蝶ちゃんいいの選んだんやね。龍馬によう似合っとる」

「そんなことありませんよ。龍馬さんがカッコいいから似合うんですよ」

「ん……」

龍馬さんが襟巻で少し顔を隠してしまいました。その顔は少し赤いです。

……あっ、私ってばつい、龍馬さんのことをカッコいいと言ってしまった。

思い返すと恥ずかしい……。

「ふふふ、二人何かあったん?」

「っ……、別に何もねえよ。それよりもおまえこそ、その髪留めどうしたよ」

岡田さんが髪を纏めている紅色の髪留めに触れました。

「ウチも蒼蝶ちゃんに貰ったんよ。なっ」

「はい、岡田さんには大変お世話になったので、そのお返しにと思って」

龍馬さんの襟巻を買った場所の近くに小物屋があって、そこでバレッタのような髪留めを見つけたのです。

普段の岡田さんの髪は肩の位置まであって、よく「邪魔やな~」と呟いていたのを知っていたので、岡田さんへの送り物にしました。

紅色に花の蒔絵が描かれている上品な感じの髪留めです。
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