私の師匠は沖田総司です【上】

「どうする。他の道から行くか?」

「それでもええけど、おそらくそこにも追っ手がいるで」

確かにそうだ。追っ手もそこまで馬鹿じゃない。

だったらどうしたらいいんだろう。

「ウチが奴らを引きつける。その間に龍馬と蒼蝶ちゃんは長州藩邸に向かうんや」

「でも、それじゃ岡田さんが」

「ウチのことなら気にせんでええ。あないな下っ端連中に遅れはとらん」

それでも引き留めようと私が口を開こうとしたら、龍馬さんが私の口を大きな手で覆いました。

龍馬さんの手を剥がそうとしてもピクリとも動きません。

声を出したくてもムグムグとくぐもった声になってしまう。

「死ぬなよ」

「無用な心配や。蒼蝶ちゃん、またな」

「っは、岡田さん!」

やっと龍馬さんの手から逃れ、名前を呼んだ時にはすでに岡田さんは走り出していました。

「何者だ!止まれ!」

すぐに複数の男の怒号と荒々しい足音が聞こえる。それも次第に遠くなっていきました。

そして足音が完全に聞こえなくなる頃、龍馬さんが私の手を掴んだ。
< 449 / 472 >

この作品をシェア

pagetop