私の師匠は沖田総司です【上】
「どうする。他の道から行くか?」
「それでもええけど、おそらくそこにも追っ手がいるで」
確かにそうだ。追っ手もそこまで馬鹿じゃない。
だったらどうしたらいいんだろう。
「ウチが奴らを引きつける。その間に龍馬と蒼蝶ちゃんは長州藩邸に向かうんや」
「でも、それじゃ岡田さんが」
「ウチのことなら気にせんでええ。あないな下っ端連中に遅れはとらん」
それでも引き留めようと私が口を開こうとしたら、龍馬さんが私の口を大きな手で覆いました。
龍馬さんの手を剥がそうとしてもピクリとも動きません。
声を出したくてもムグムグとくぐもった声になってしまう。
「死ぬなよ」
「無用な心配や。蒼蝶ちゃん、またな」
「っは、岡田さん!」
やっと龍馬さんの手から逃れ、名前を呼んだ時にはすでに岡田さんは走り出していました。
「何者だ!止まれ!」
すぐに複数の男の怒号と荒々しい足音が聞こえる。それも次第に遠くなっていきました。
そして足音が完全に聞こえなくなる頃、龍馬さんが私の手を掴んだ。