私の師匠は沖田総司です【上】
「行くぞ」
「でも、岡田さんが……」
「アイツなら大丈夫だ。無謀な賭けに出るほど馬鹿な奴じゃねえから」
グイッと強い力で腕を引かれ、暗い道を走り出しました。私たちは頼りない月明かりを頼りに走り続ける。
そして何個目かの角を曲がると、三人の男と鉢合わせた。
龍馬さんの顔を見た瞬間その人たちの顔色が変わる。
「貴様は坂本龍馬!」
「ちっ、こっちだ!」
急に反対側に腕を引かれて転びそうになるけど、何とか倒れるのを堪え走り続ける。
後ろをチラッと振り返れば、さっきの男たちが刀を抜いて追いかけてきていました。
暗い中に鈍く光る刀身を見た瞬間、肌がゾクッと粟立った。
この人たち、本気で龍馬さんの命を狙ってる。
命のやり取りの場面は初めてではないけど、やっぱり怖い。そして同時に龍馬さんを守りたいと思った。
龍馬さんはこんなところで死んではいけない人なんだ。
絶対、私が龍馬さんを守る。
追っ手を引き離すために走り続ける。そして目的地まで後少しというところで、龍馬さんの様子がおかしいことに気付きました。
「龍馬さん、もう大丈夫です。さっきの人たちはもういません。だから少し止まってください」
「ああ……」
荒い息を吐きながら、龍馬さんは壁に背を預けた。
龍馬さんの顔を覗き込むと顔色が悪くて額に脂汗をかいている。