私の師匠は沖田総司です【上】
「傷が、痛むんですか?」

「……平気だ。気にするな」

龍馬さんは、何でもないように振舞いますが、顔はすごく辛そうです。

それもそうだ。傷が塞がったばかりで、本来なら、まだ、安静にしないといけないから。

懐から手拭いを取り出して、額に滲んだ汗を拭いてあげていると、近くから複数の声が聞こえました。

「おい!そっちにいたか!」

「近くにまだいる筈だ!探せ!」

もう少し、龍馬さんを休ませたいけど、あまり時間がありませんね。

壁に身を隠しながら通りを見ると、さっき追いかけてきた人たちが、仲間と合流しているのが見えました。

今の状態の龍馬さんを連れて、この状況を切り抜けるにはどうしたらいいんだろう。

脳裏に一つの案が浮かぶ。

……これしか方法がありませんね。

考えていると、龍馬さんが息を吐きました。

「蒼蝶、おまえは逃げろ」

「そんなこと……」

「いいから早く逃げろ。後は一人で何とかする」

壁に手を付き、立ち上がろうとする龍馬さんだけど、力が入らないのか、直ぐに座り込んでしまいました。

「無理はしないでください。私が何とかしますから」

「何、するつもりなんだ」
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