私の師匠は沖田総司です【上】
「久しぶりね、天宮蒼蝶さん。突然行方不明になったと思えばまさか江戸時代にいたなんてね」
桜木さんはクスクスと笑い、私を見下ろした。
この顔、この声。やっぱり同じクラスの桜木小鳩さんだ。
どうして
「どうして桜木さんがここにいるの……?」
「……さあね。私も分からないわ。道を歩いていたら、いつの間にかこの時代に来ていたの。最初は怖かったけど、こうして天宮さんと会えたから今となってはよかったわ。
だってこれで……」
「っ……」
桜木さんを纏う空気が変わり、全身に悪寒が走った。これは……、殺気だ。
私はすぐに刀を持つ手に力を込めた。
「これであの時の落とし前がつけられるってことだからね!!」
「くっ!!」
ギンッ!と鋼同士がぶつかり、派手な金属音が耳の奥まで響かせた。
寸でのところで防いだ桜木さんの刀と師匠の刀が交わりギシギシ軋む。
このままじゃ……押し負ける!
「っ!」
女の人とは思えない力で体を押され後退する。
手から弾かれた刀が地面を滑っていった。
「あっ……!」
後退した拍子に石に躓き尻もちをついた。地面にぶつかった痛みを感じるより先に、桜木さんの殺気に全身が強張った。
「じゃあね、天宮さん」
私に向かって刀が振り下ろされる。そう思った瞬間、誰かに抱きしめられた。