私の師匠は沖田総司です【上】

「蒼蝶ちゃんもありがとうな。山南さんと一緒になれるのも蒼蝶ちゃんが背中を押してくれたおかげや」

「いいえ、そんな……」

本当に私はお礼を言われるような事をしていません。

師匠や自分の為に山南さんの未来を変えたくて明里さんを利用したしたんだ。

自分のエゴで人の気持ちを利用した。

だからお礼を言われるような事はしていません。

「蒼蝶ちゃん」

「むっ!?」

突然明里さんに鼻をギュッと摘ままれてしまいました。

「ウチな今とても幸せなんよ」

明里さんの言葉に思わず目を丸くしました。

「もしあの時、蒼蝶ちゃんや千代菊はんに説得されなかったらウチはずっと後悔しとった。こうやって心から笑える日なんて来なかったと思うんや」

明里さんが笑いました。私の目から見てもとても幸せそうな笑顔。

一点の曇りもない晴れやかな笑顔でした。

「心から笑顔になれるのも今がとても幸せやからや。ウチがこんなに幸せになったのも全部蒼蝶ちゃんのおかげなんやで」

「明里さん……」

「だからそんな暗い顔せんで。蒼蝶ちゃんはウチと山南さんを橋渡ししてくれたんや。だからウチは蒼蝶ちゃんに媒酌人夫人をお願いしたんよ」

「……はい!」

鼻を摘ままれているせいで少し濁った声になってしまいましたが、私は声に出して返事をしました。

明里さんのおかげでずっと胸の内に秘めていた後ろめたさがスッと消えた気がします。

それに暗い顔をしているのはダメだという事にも気付きました。

今日はおめでたい日なんだ。暗い顔なんて場違いもいい所です!
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