私の師匠は沖田総司です【上】
「あの、土方さんすみません。とっても不吉な言葉が聞こえた気がするんですが、私の気のせいかもしれません。もう一度言って頂けませんか?

今度はちゃんと聞くので」

「おまえの入隊を拒んだ」

「……やっぱり耳の調子が悪いみたいです。入隊を拒んだと言う、幻聴が聞こえるなんて、そんな」

「残念だがおまえの耳は正常に機能している」

「……」

これはもう、現実逃避をせずに認めた方が良いのかもしれません。

体も心もズンッと重くなり、落ち込むしかなかった。朝の上機嫌が一気に消え失せてしまいました。

「どうして、ですか?どうして私の入隊を拒んだんですか?」

「女は男より力が弱い。足手まといになるのが分かりきっているからだそうだ。厄介者をわざわざ自分の隊に置きたくないだと」

「……」

土方さんの言葉が鋭利な刃物のようにグサリと私の心に突き刺さりました。

足手まとい……厄介者……、そんな言葉が頭の中をグルグルと回る。

確かに私は女の身で、力では男の人に敵わない。

でも、私には師匠から教えてもらった剣術がある。

だから、力では敵わなくても剣術があれば生きている師匠の役に立てると思っていた。

でも、その考えがいかに浅はかだったかが分かる。

所詮、私は女。

隊を仕切る人にしたら、それだけで厄介者に思えるんだろう。

そんな私を隊に置いておきたいなんて思いませんよね……。
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