CLOVER
しばらくの間、
私も岡野さんも、
お互いをただじっと見つめていた。


いや…正確に言うと、
目が離せなかった。


なんだか反らしては
いけないような気がしたから。


先に目を反らしたのは、
岡野さんだった。


「…上野さん、教えてあげる。私ね…2つの顔があるんだよ」


岡野さんは私を
バカにするようにそう言うと、
くすくすと笑いながら去っていった。


……やっぱりそうなんだ…


葉月が言っていたとおり、
彼女は2つの顔を
持っているようだった。


しかも……
あの言い方。


私をバカにするような言い方…。


『先輩と付き合うのは私よ!!』

って言うかのような…。


でも…それはダメ。


私だって先輩と付き合いたい。

先輩の『彼女』になりたい。


あの日…あの入学式のときから、
私はずっと先輩をみてきた。


智に告白されたこともあった。
でも…断った。


やっぱり先輩が
好きだったから。
< 122 / 125 >

この作品をシェア

pagetop