【短編】ドーナツ
最近彼氏ができた友達の、愚痴かのろけかわからない話に半分耳を傾けながら、あたしはどんよりとした空に視線を這わせる。
彼を、見つけた。
こんな鉛色の空の下でも、彼は自ら発光しているかのように、あたしの視線を吸い寄せる。
顔なんて見えなくても、あれは間違いなく彼だ。
ほんの隅っこだったとしても、とにかく視界に入りさえすれば、あたしには絶対に彼を見つけられる自信があった。
どこにいて、
何をしていようとも。
今日の彼は、フェンスを乗り越えて屋上の縁に座り、投げ出した足をぶらぶらさせながら、登校してくる生徒たちを見下ろしていた。
屋上の彼の姿には、あたしを悩ませる邪魔くさい湿気や重力など、微塵も感じられない。
それどころか、そのまま空に飛び立ってしまうんじゃないかと思った。
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彼を、見つけた。
こんな鉛色の空の下でも、彼は自ら発光しているかのように、あたしの視線を吸い寄せる。
顔なんて見えなくても、あれは間違いなく彼だ。
ほんの隅っこだったとしても、とにかく視界に入りさえすれば、あたしには絶対に彼を見つけられる自信があった。
どこにいて、
何をしていようとも。
今日の彼は、フェンスを乗り越えて屋上の縁に座り、投げ出した足をぶらぶらさせながら、登校してくる生徒たちを見下ろしていた。
屋上の彼の姿には、あたしを悩ませる邪魔くさい湿気や重力など、微塵も感じられない。
それどころか、そのまま空に飛び立ってしまうんじゃないかと思った。
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