コーヒーを一杯

「子供なんて、こんなものなのかしら。親なんて、今でいうウザイ相手なだけなのかしら」

湯気の上がるコーヒーカップは、とても素敵なデザインで、それだけでうっとりしてしまう。
時子さんの淹れてくれたコーヒーは、そのうっとりさを更に格別な物にしてくれるほどの美味しさだった。
だけど、そのうっとりとする裏側では、今日子のことが、これでもかっていうくらいに私の気分を落ち込ませている。

「呼んでも返事もしないのよ。終いには、うるさいですって」

言われた瞬間の娘の怒った顔と、心に広がった寂しさが甦ってきた。

今日子のために塾も習い事も、調べつくしていいところを見つけたし。
勉強ができるいい環境をと、机に向かっている時にはなるべく静かにしていたし。
食べ物にも気を遣って、栄養をちゃんと考え、毎日一生懸命に作っていた。
いろんなことに配慮していたんだ。

なのに、あんな態度……。

とても大切に育ててきた娘に、あんな言葉を浴びせられるなんて、悲しくてたまらない。