コーヒーを一杯
「華っ!!」
屋上の軋むドアを勢いよく開けて、私は幼馴染の名前を力いっぱい叫んだ。
屋上の端っこには、華が危うげに立っていた。
「華っ」
もう一度大きな声で呼ぶと、華がゆっくりと振り返り、その手にはお揃いのキーホルダーが握られていた。
大丈夫。
まだ間に合う。
お願い。
それ以上、行かないでっ。
「華!」
力いっぱいもう一度叫んで、私は自分のキーホルダーが華に見えるように鞄を高く掲げる。
それから昔みたいに、華の名前をもう一度呼んだんだ。
「華。一緒に帰ろう。一緒に帰ろうよっ」
泣きながら笑う私の顔を見て、華も泣きながら笑った。
お揃いのキーホルダーは二つともキラキラと綺麗で、夕日が見守るように優しいオレンジ色で私たちを包んでくれる。
私は華の暖かい手をしっかりと握り、もう離さないって力いっぱいそのオレンジに向かって叫んだ。
笑顔を見せてくれる華を、私は絶対に失いたくないから――――。