コーヒーを一杯
翌日。
私は今日子へと、塾について話をした。
「ねぇ、今日子。塾の日にち、週三日じゃなくて、もう少しふやそっか」
週末にやっているピアノのお稽古から戻った娘の今日子へ、手作りのクッキーをおやつに出しながら訊ねると、頬を膨らませて私を見る。
「えぇー。テレビ観る時間がなくなっちゃうよ。友達とも遊べなくなるう」
今日子は、塾に通っていない唯一の平日二日に観るテレビを楽しみにしていた。
時々公園で一緒に遊んでいるお友達の事も気にしている。
その事は、私も充分解っている。
だけど、今日子がテレビを観ている間や公園で遊んでいる間にも、周りの子達は塾や習い事をし、どんどん上を目指しているのだ。
今日子だけ置いていかれるのは、可哀相だ。
一人置いてきぼりにされてからじゃ遅いんだから。
「ほら。夕美ちゃんも一緒だし、いいじゃない」
「そうだけど……」
「お母さん、週五日通えるように手続き進めてるから。ね」
キッチンでグラスに手作りのりんごジュースを注ぎ、テーブルに置くと不満顔をしながらグラスを手に取り飲んでいる。
「テレビは観られないかもしれないけど、みんなに置いていかれるよりはいいでしょ?」
キッチンに戻った私がそういうと、今日子は不機嫌な顔のままクッキーを口にしていた。
私はキッチンに立ちながら娘のそんな顔を一瞥して、他にどんな習い事をさせたらいいかと思案していた。