nero
破壊衝動
いつもみたいな毎日が続くと思っていた。
さいを投げたのは誰?
嗚呼、自分か。
否、君か。
「何か用?」
冷たいアルトの声が頭に響いた。
日が沈む教室では何故か私と彼。
いつもならば帰宅部な私は、夕日を眺める彼を横目にまだざわめく教室を出るはずなのに。
私は何がしたかったんだろう?
そんなの分からない。
こうやって一人で悶々と考えているうちに彼は益々、不機嫌な顔を倍増させる。
嗚呼、嫌われたくはなかったな。
好きになってなどくれなくても、私の事何とも思ってくれなくても嫌われなければ、それでいいと思ってた。
「あっ、あのう…如月君は帰らないの…」
自分でも有り触れた言葉だなって思う。
当たり障りがなくて、とても臆病な言葉。
「そう」
彼は、そう言って鞄を持って立ち上がった。
そのまま苦笑いを固める私を置いて、教室のドアを開けた。
「帰るさ」
彼の冷たい目が一瞬、私を見据えていた。
“破壊衝動”
(きっと私は壊れたんだ。)
(それならいっそ君を壊してやりたい)