僕の幸せは、星をめぐるように。
「その、阿部くんと一緒にいれるのは嬉しいかも。今ユカチンと一緒にいるのも楽しいけど、それとはちょっと違う……って比較してごめんっ!」
わたしが慌てて謝ると、
「あたしだってあんたといるよりクニオといる方が嬉しいわ」
と言って、ユカチンはパキっとつまようじを2つに折った。
そりゃそーですよね。
付き合いたてのカップルですからね。
このフードコートには、このお好み焼きが売ってるお店の他、マックもある。
あと、かぷかぷかぷと発するあの不思議な生き物の名前がついた軽食のお店もあった。
若者の他、こどもたちが走り回っていたり、おばあさんやおじいさんも休んでいたり、こここはみんなの憩いの場になっている。
そんな中、ユカチンは残り少ないお好み焼きにはしを入れながら、話し始めた。
「それってご飯と味の関係と一緒じゃね? ご飯は死ぬまでずっと食べつづけるじゃん。友達とか家族とかと似てる。でも彼氏は違う。彼氏……恋は味の方だべ?
別に味がなくても腹を満たせば生きてけるけど、おいしい味のもの食えればやっぱ嬉しいし止められなくなる」
そう言って、ユカチンはお好み焼きにかかっているマヨネーズとソースをはしで撫でてなじませた。
「あと、何か恋すると、自分にもどんどん味がついていく感じしね? 毎日楽しくなるっつーか」
えーと。
わたしは奥歯に挟まったかつお節を舌で取りながら、
今のユカチンの言葉の意味を考えた。
すると、父が時々作っている、あの小麦粉と水を焼いたものを思い出した。
どんどん焼きと呼ばれるそれは、地域によって差はあるらしいけど、小麦粉の生地が調味料や具と合体するだけで、わくわくする不思議な食べ物だ。
このお好み焼きだって、同じようなものか。
確かに、ユカチンやクニオや家族といる時と、阿部くんといる時では、わたしの感情は違う。
何だろう。
阿部くんといると、胸のあたりがきゅーっとするような。
ちょっと苦しいんだけど、でも、一緒にいると嬉しくなる。