僕の幸せは、星をめぐるように。
「わたしなんかと噂になったら迷惑だよね。なんかごめんね!」
なる早でこの場を離れようとしたわたしは、口からこんな言葉を発していた。
「ううん。トシミちゃんこそ嫌だよね? おれなんかと……」
「いやいやいんや、全然っ! その……えーと」
わたしは急いで阿部くんの言葉を遮ったけど、その後、何て言ったら良いのか分からなくなってしまった。
『言いたい人には言わせておけばいいし』
って何かクールすぎでね?
『むしろ噂になっても全然いいっす!』
ってこれじゃ告白じゃん!
のろまな脳を必死に回転させていると、それに合わせて視線が自然と右へ左へ高速移動されてしまう。
阿部くんはそんなわたしを見て、ぷっと吹き出していた。
「ごめんね。今おれもちょっとテンパっちゃってるけど、トシミちゃん、目が泳ぎすぎてて……あはは! 笑っちゃってごめん」
突然、目が線のように細められ、手の甲を口元に当てながら笑いだした。
風がどおっと吹き、わたしのセーラー服と阿部くんの前髪を揺らした。
奥の木々も慌てているかのように揺れ、がさがさと立体的な音を出している。
わたし、好きだな。この笑顔。
無表情だとクールっぽいイメージなんだけど、笑うと涙袋が見えて、ちょっとえくぼも見えて、人懐っこいような、可愛くて優しい顔になる。