僕の幸せは、星をめぐるように。


「そんなに泳いでましたか……?」


と恐る恐るわたしが聞くと、


「うん。かわいいなって思った」


と言って、阿部くんはゆっくりとわたしの頭に手を伸ばした。



……え?



そして、わたしの黒髪は優しく撫でられた。


その瞬間、わたしの全神経がそこに集中された。


全身で阿部くんの感触を確かめようと本能が悟っている。


「…………」


細くて綺麗なんだけど、骨ばっている阿部くんの手の感触。


触られているのは頭のてっぺんなのに、

胸の奥がぐっと掴まれて、くすぐったさと心地よさが全身に伝わっていく。


阿部くんは今、どんな顔でいるんだろう。


見たいけど、絶対に今顔が真っ赤になっているはずだから、視線を上げることができない。


鼓動は速くなって、胸も苦しいのに

もっと触れられていたいと思うわたしはおかしいのだろうか。



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