僕の幸せは、星をめぐるように。


でも、確かにわたしは心のどこかで思っていた。


阿部くんのことを一番深く知ろうとしているのは、わたしなのではないかと。

当の本人は彼女作る気ないみたいだけど。


でも確かに阿部くんだって男の子だし、密かに点在しているらしい阿部くんファンから、アプローチされたら……。

お姉さんが教えてあ・げ・る的に誘われちゃったりしたら……。


そんなのいやー!


わたしは一口大に切った鶏肉を調味料入りのボールに漬け込んだ。


「ちょ、あんた……肉に怨念込めないでよ」

「は!」


わたしはいつの間にか恐ろしい顔をしていたらしい。

いやいや。今は目の前の作業に集中集中……。



時間をおいて肉に味を染み込ませてから、小麦粉にまぶして油に入れる。


揚げたら一旦油から出し、余熱を使って中まで熱を通してから、強火でもう一度揚げる。


こうすることによって、中はジューシー、外はサクサク、

味もたっぷり染み込んだわたしたちの作品が完成する。


ちょうど、

「じゃがいもとフランクフルトの試作品もできたよ~」

と隣のコンロで作業中のクラスメイトが言った。


お、これはチャンス!


「あ、わたし教室さ持ってくよ。阿部くんも行こー!」

「ん? ほうはーい(りょうかーい)」


わたしがそう呼びかけると、口をもぐもぐさせながら阿部くんがついてきた。

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