僕の幸せは、星をめぐるように。
「わたしのおかーさんが、記念館で働いてて。この前わたしも行ったんだけど、阿部くんのこと見たよ~」
わたしは軽めに笑いながら阿部くんにそう続けた。
「ふーん」
阿部くんの少し細められた奥二重の目は、しっかりとわたしの姿をとらえている。
うーん。
演劇の役で言うと、クラスメイトの女子3、くらいだろうか。
微妙にうるさくて、微妙にどうでもいい存在。
阿部くんの目にわたしはそう写っているのだろう。
開けられた窓からの風が、カーテンを波のように揺らしていた。
その時である。
「わーー! おんめぇ、なぁに阿部ちゃんのことナンパしてんだぁ!?」
突然、方言丸出しのバカ声が、2人の空間にダンプカーのごとく突っ込んできた。
「は? ナンパじゃねーし!」
わたしは、その声の主をにらみつけた。
かつて、様々な研究者たちにその正体が議論された『クラムボン』を焼肉のたれにしてしまった過去を持つ、幼なじみのクニオだ。
ちなみに、『幼なじみ』というのは、ケータイ小説界においては確固たるステータスを築いているスイーツな言葉なのだが、わたしとクニオの間にはそれは一切通用しない。
クニオは日曜夜の国民的人気アニメでいうと、『ヤマダ』と『イソノ』を足して割ったようなキャラなのだ。
しかも、幼なじみとは言っても、この東北の田舎町では、幼稚園から一緒のメンバーも少なくはない。
さすがに高校にもなると、同じクラスになったのはクニオくらいだけど。