僕の幸せは、星をめぐるように。
わたしはところどころに薄い雲がかかった星空を見上げた。
「……1回だけ目があったじゃん。その時、めちゃくちゃ人がいたのに、たくさん星が瞬く中で阿部くんと2人きりみたいな感じした」
わたしは何を言っているんだろう。
でも、実際そう思ったのだ。
雲の隙間から瞬く星たちを眺めていると、
恥ずかしさとか照れくささというフィルターを通り越して、自然に口から思いがぽろぽろとあふれ出していく。
本当はライブ後すぐに伝えたかったんだけど。
「あと、単純に格好よかった」
目を閉じると、近くにある人工の光よりも、細い弓のような月や、カシオペヤ座の形がまぶたの奥に浮かんだ。
「……トシミちゃんにそんなこと言われたら照れるんだけど」
そう言って、彼も頭上に広がる藍色を見上げた。
カシオペヤから少し伸びたところ、あれがアンドロメダかな。
それ以降はうっすらと雲の灰色が邪魔して見えないな。
わたしはしばらく星空に集中していたけど、
冷たくなっていく空気によって小さなくしゃみを一発出してしまった。
「寒い? これ着る?」
そう言って、彼は着ているカーディガンをひとつまみした。
「ううん。大丈夫」
「じゃあ、もっとこっち来て」
「うん」
わたしは言われたとおりに、おしり一つ分、阿部くんの方へ移動した。