僕の幸せは、星をめぐるように。


「阿部くん?」


「…………」


彼を呼ぶと、肩に触れられていた手は弱々しくわたしから離れていった。


わたしは体を起こし、阿部くんを見つめた。


視線は重ならない。


「……どしたの?」


さっき見た星たちが、広がっていく灰色の雲に隠されていくかのよう。


阿部くんはうつむきながら、こうつぶやいた。



「おれはこんなに幸せでいいんだろうか」



そして、奥二重の目がゆっくりと閉じられるとともに、


そこからあふれ出したのは、

ひとすじの涙――。



――あ!



わたしは反射的に右手を伸ばしていた。

よく分からないけど、その雫をどこにも落としてはいけないと思ったからだ。


間に合え!


気がつくと、わたしは阿部くんの白いほっぺたに親指を押し付けていた。


ぷにっとした肌の感触がして、

あまり肉がついていない頬を少しだけ上に寄せていた。


でも、わたしの親指はさっきの涙をしっかり捕らえたようで、水滴は形を歪めていた。

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