僕の幸せは、星をめぐるように。


クニオの黒い髪はワックスによってエアリーに仕上げられている。

年を取るごとに洒落けづいていくのも鼻につく。


「阿部ちゃんはオラのものだぁ!」


そう言って、男性用汗ふきシートのものらしき爽やかな匂いを発しながら、

クニオはわたしたちにずけずけと近づいてきた。


ちなみに阿部くんとクニオは、会話もテンションも全く噛みあわないのになぜか仲が良い。


あーもう!

もう少し阿部くんとお話していたかったのに。


クニオの処理に行こうとする直前。

ちらっと、阿部くんを見た。



彼は無表情のまま、人差し指をふっ、と口元に当てた。



その仕草がシュールで、でも可愛らしくて、

笑うところではないと思うけど、思わず顔がニヤけてしまった。



あの場所にいたことは内緒……ってことかな。



それから、阿部くんは席を立ち、

スタスタとわたしを追い越して、クニオに軽い腹パンをお見舞いしていた。


「おおぅ、おめーの一発、俺は好き……だぜ」


クニオはそう言って、阿部くんに抱きついた。


何なんだこの絡みは。キモイ。



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