僕の幸せは、星をめぐるように。
「何してんの?」
「ん? アンドロップ聴いてる」
「じゃなくって。サボり?」
「うん。そろそろ戻るよ」
机にうつぶせになっていた体勢を起こしながら、イヤホンを耳から抜く阿部くん。
広い空間の壁沿いにたくさんの本棚が隙間なく並べられ、
中央には大きな机と椅子が敷き詰められている。
昼休みと放課後にしか司書さんや図書委員がいないため、
窓の外から聞こえてくる生徒たちの声しか、音はなかった。
「阿部くんって中学の時ふりょーとかじゃないよね」
「あはは、違うって」
「じゃあ、何で?」
「うーん。何でだろ」
「……ちょっとは教えてくれたっていいじゃん」
わたしがいじけたようにそうつぶやくと、彼は真顔になった後、ゆっくりと口を開いた。
「中二くさいけど、時々自分が本当にここにいていいのか、分からなくなんない? ううん、いていいんだろうけど。
ちょっと消えたくなる時があって、こうやって1人で休んでるの」
窓からの光が、阿部くんのふんわりと整った髪の毛を茶色に染めている。
もともと少し茶髪気味だけど。
逆光になっているその顔は、今、どんな感情を秘めているんだろう。
って、消えたくなるってどういうこと?
彼が言ったことに疑問を感じながらも、落ち着いて考えると、
少しずつ点が線になって結ばれていくような気がした。