僕の幸せは、星をめぐるように。
☆ ★ ☆
「おれが中3の頃ね。
その先生は、大学出たばっかりで、
1年契約の講師としてうちの中学に赴任して、2年生の一部の国語の授業と、図書室の司書を担当してた。
後輩いわく、その先生の授業、すごくしっかりしていて分かりやすかったんだって。
その時のおれは、勉強も部活も何となくやる気が無くて。
ってか、ぜーんぶそこそこにしかできないし、自分には何もないことに気がついて。
友達とダラダラ遊んだり、ゲームしたり、ボーっとした毎日を過ごしてたのかな。
でも、ある日、おれが学校の図書室で授業サボってたら、
『ここ図書室なんだし、寝てサボるくらいなら本でも読みな、じゃなきゃソッコー追い出すよ』
ってその先生に言われた。
可愛い先生として男子の間では有名だったけど、喋った印象は、普通の先生と違って何か面白い人だなって思った。
しょうがないから、本棚を探って、知ってる本を探した。
確か、ばーちゃんが住んでるところって『賢治のふるさと』で有名だったな、と思って、宮沢賢治の本をちょっと読み始めてみた。
それで別の日、
『お! 読んでるじゃん。宮沢賢治っていいチョイスだね』って絡まれて。
あと、
『知ってる? 賢治さんって童貞のまま死んじゃったらしいよ』って。
おれ急にそんなこと言われたから、テンパって何も言えなくて。
そしたら、『君なら賢治の気持ちが分かるかもしれないよ。いろいろ読んでみなよ。どーてーくん!』って笑いながら言われた。
やっぱり面白い人だなあって思った。
そして、そんな先生に惹かれていった。
しかも読んでいくうちに内容はよく分かんないけど、賢治作品ってなんか面白くってハマっていった。
それからだんだん図書室に行くのが楽しくなって。
色々しゃべるようになって。
ロックが好きって言うから、おすすめのCDとか貸してもらって。
ここのボーカルもこのアルバム出したとき童貞だったらしいよって、ゴイステの昔のアルバムとか貸してくれた。
あ、銀杏の前身のバンドね。
でも、だんだん分かってきた。
そんなにね、心がつよい人じゃなかった。