僕の幸せは、星をめぐるように。
夕方、電車が混む前に駅に戻った。
地元までは鈍行電車で40分くらい。
「最近何かおすすめの音楽とかある?」
「んー。インディゴラエンドとかいいよ」
「あ、阿部くんサマロクで見に行ってたよね」
「そう、それ」
ガタン、ガタン、と静かに木々の中を電車は進み、
景色が開けると、薄暗くなる田園風景が広がった。
「正月とか実家帰るの?」
「うーん。どうしよっかな。ほら、今住んでるのばーちゃん家だから、親とかねーちゃんがこっち来るんだよね」
「あ、そっか! そういえばそーだよね!」
わたしが大声を出すと、うるさかったのか、正面に座っていたおじさんにギロリと睨まれた。
――ああ。自分がばかみたいだ。
今日一日、1人で変に空回っているような気がして、
自分が何か行動をしたり、言葉を発したりする度に、ずきずきと胸を痛ませていた。
阿部くんは窓の外の景色を見ている。
わたしがその横顔を見つめていると、阿部くんは
「なーに?」
と言って、こつんとわたしに頭をぶつけてきた。
何これ。可愛いんだけど。
ばか。きゅんとしちゃうじゃん。
「…………」
わたしは隣に座っている阿部くんの肩に寄りかかってみた。
ごわっとしたモッズコートの生地感が頬に伝わる。
阿部くんもわたしの方に頭を寄せてくれているのか、
ふわっとした髪の毛の感触をおでこのあたりに感じた。
鼓動が少しずつ早くなっていく。
そのまま、阿部くんの手が突っ込まれている、コートのポケットにわたしも手を入れてみた。
さっきとは逆で、今、わたしの手は冷たかった。
ポケットの中。
阿部くんの指に触れた瞬間、温められた手にぎゅっと握られた。
わたしは涙が出ないように、目をつぶった。
すると、心地よい電車と脈の揺れを感じながら、そのまま眠ってしまい、気がついたら地元の駅に到着していた。
あ、やば、寝ちゃってた!
って、阿部くんも爆睡してんじゃん。