僕の幸せは、星をめぐるように。
阿部くんもそれに気づいたんだろう。
繋がれた手はそのままに、彼はもう片方の手で、
前かがみになっているわたしの前髪を撫でた。
その瞬間、更にあふれ出した。
「ひっく、うっ。うわーん!」
我ながら何て情けない泣き方だ……。
もう夜になり、歩行者や自転車もほとんど通っていないから良いけど、
車で通り過ぎる人たちに変な目で見られるくらいに、わたしは声を上げて泣いていた。
嬉しさ、悔しさ、苦しさ、もどかしさ。
いろんな感情がわたしの口の中でまざりあい、よく分からない味となってわたしを攻める。
阿部くんの中学の頃の話を聞いてから、わたしは辛くて仕方が無かった。
先生との恋とか、クラスメイトに変な噂を立てられた、とか、嫌な先生を殴ろうとした、とか、
思っていた以上に、それは壮絶な話だった。
でも、『話してくれてありがとう』『大変だったんだね』など、そういうたぐいの言葉はかけられなかった。
何か違うと思った。
たぶん、わたしは、その悲しみを自分のものように受け入れていたから。
過去を持った彼そのものを包み込みたい。
彼が幸せになるために何ができるのだろう。
そう思いながら、今日は積極的に彼に近づこうと思って、頑張ったのだ。
でも、わたしではだめなんだろうか……。
わたしたちの手は確かにつながれていて、
彼の体温もわたしのものと今もなお混ざり合っている。
嬉しいはずのことなのに、
どうして、こんなにも胸が苦しいのだろう。
目の前にそびえ立つ銀河鉄道の光が、わたしたちをやわらかく照らしていた。