僕の幸せは、星をめぐるように。

「……トシミちゃん、今日無理してたでしょ」


「そんなことないよぉ~、ひっく。う~~」


「バレバレだし」


やはり彼には見透かされていたらしい。

上目で阿部くんを見ると、ほんの少し頬を膨らませて、困った顔をしていた。


「だってぇ~。過去に大変なことがあってもぉ、阿部くんには~幸せになってほしいし、

わたしが単純に~、阿部くんのそばにっ、いたいと思ったんだもぉ~ん。ばかばかばかー!」


わたしは嗚咽まみれでそう言葉を発し、

繋がれていない方の手――左手で拳を作り、彼の肩や胸のあたりを弱々しく叩いた。


おこちゃまか自分、と思いながらも、自分で自分の感情を止められなかった。


しばらく阿部くんは無言でわたしのへぼパンチを受けていた。


しかし、その攻撃が10ヒットほどした頃だろうか。


「も~~~~~!」


と静かにうなる声が降ってきたため、わたしは手を止めた。


怒りでもなければ、悲しみでもない。

こんなに感情的な彼の声。初めて聞いた。


「……へっ!?」


気がつくと、かばっ、と音が鳴るくらいの勢いで、わたしは彼の腕に包み込まれていた。


「ばか! いいよ。トシミちゃんはトシミちゃんらしくいればいいよ!」


阿部くんはそう言って、力強く、わたしを抱きしめる。

わたしは追加で涙を流すことなく、彼の胸にうずもれていた。


阿部くんはわたしの背中を強弱まちまちの力でさすったり、軽く叩いたり。


「……阿部くん?」


「おれなんかのために無理しないでよ」


その手と声から伝わってきたのは、

優しさと、戸惑いの気持ち。


「ばかぁ……阿部くん、だからだよ」


わたしにとっては、保健室で阿部くんに陸上部時代のことを話した時から。

阿部くんにとっては、イギリス海岸で中学の頃のことを話したときから。


わたしたちは他人じゃない。


はんぶんこだ。



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