僕の幸せは、星をめぐるように。
重力にならった空気を切り裂き、わたしは懸命に飛んだ。
まさか、こんなにスピードを出してくるとは思わなかったんだろう。
阿部くんは目を大きく開いて驚いた顔をしながらも、わたしに両手を伸ばした。
わたしもそのまま彼の胸に飛び込み、両腕で彼を包み込む。
しかし、
「うわっ」
と阿部くんは声を上げ、わたしが飛び込んだ勢いによって、後ろにバランスをくずした。
でも、その腕は、わたしをしっかりと抱き止めたまま。
後ろに広がるのは、やわらかくて白い、雪のクッション。
2人でその中にどさりと沈みこんだ。
「あはは!」
「……ぷっ、ははは」
気がつくと、わたしのすぐ下には阿部くんがいた。
雪まみれになって、お互い笑っていた。
彼を押し倒した体勢で、わたしは至近距離でその目を見つめた。
阿部くんも、優しい顔になってわたしを見た。
その視線が重なった時、
「飛べたね」
と彼はつぶやいた。
阿部くんは髪の毛やコートが雪まみれになっている。
上手く言葉で表現することができなくて、
「うん!」と言って微笑みながら、わたしは彼の顔や前髪についている雪の粒をほろった。