僕の幸せは、星をめぐるように。
「わたしも好き。阿部くんが大好き」
言葉にすると、瞳の奥がつんと痛み、
涙の層がいくつも重なってあふれ出しそうになる。
急に、彼の腕に力が込められた。
わたしはごろんと横に転がされ、背中が雪の中に沈んだ。
さっきとは逆で、後頭部やコートの背中についた雪をはらりと舞わせながら、阿部くんがわたしの上に乗っかっていた。
下から彼の髪の毛を撫でたり、肩を叩いたりして雪をほろっていると、ゆっくりと彼は口を開いた。
「ごめんね」
「何であやまるの?」
「ずっと言えなくて」
「……ううん」
再びキスされる。
お互いの唇は温まったようで、さっきよりも柔らかい感触が直に伝わった。
わたしの中から恥ずかしさや戸惑いの気持ちはどっかに吹っ飛んでしまい、
阿部くんの声や体温、気持ちを受け止めることだけに意識を集中していた。
目を開けると、彼はマフラーが巻かれたわたしの首のあたりに顔をうずめて、
「わ~~~~~!」
と、声をこもらせながら唸っていた。
「どしたの?」
わたしは彼の様子を覗き見ようと、少し首を雪面から浮かした。
「やばい」
「え?」
ようやく顔を上げてくれた阿部くん。
その頬は真っ赤に染まっていて、瞳も少し潤んでいるように見えた。
やばいのはこっちだ。
その顔も可愛すぎて、全身がきゅんと脈を打った。
阿部くんはわたしの首元に再び顔をうずめてから、耳元でこうささやいた。
「……幸せすぎてやばい」
世界がぜんたい幸福とか、個人の幸福とか、やっぱりわたしには上手くイメージできない。
だって、今、彼はとても幸せそうで、それがわたしの全ての幸せのように感じたから。
世界がわたしと阿部くん、2人だけのもののよう。
ぜんたい幸福の世界が、今、わたしにはあった。