僕の幸せは、星をめぐるように。


「だぁあああ! もう冬休みは終わるんですよー? 宿題しましょう!」


たえきれなくなったわたしは、

机の上の問題集のページを必死に折り曲げ、そう大声を出した。


残念ながら1階にはおかーさんがいるし、絶対ここに差し入れ持ってくるんだからー!


ちなみに母は家に来た阿部くんの姿を見るなり、

「賢治記念館の特別展示、リニューアルしたっけからまた来てねー」

とテンション高めで、お菓子やジュースの準備を始めていた。



両手で頬をぱんぱんと叩き、火照りを沈めてから、シャープペンシルの芯を出す。

阿部くんも数学の問題集を机に広げた。


それから、しばらくまじめに問題を解いていたけど……。


「トシミ、そこの2問目分かる?」


「ほえっ!? どこどこ?」


「ここ。公式使っても答え出ないんだけど」


ふわりと爽やかな香りが漂う。

目の前には、阿部くんの細い指と少しだけ前髪で隠れた目尻。


「トシミ? どしたの?」


無言になったわたしを不思議に思ったのか、彼はちらりとわたしに視線を向けた。


近い、近いってー!

わたし何回爆発したら良いのさー!



その日、夜ごはんを食べた後、こたつでテレビを見ていると、ボリボリと南部せんべいを食っている母にこう言われた。


「トシミさ、あんのイケメンさんと付き合えたのって、おかーさんのおかげだべ?」


――はい?


「んごっ? おんめぇ付き合ったって、誰とだぁ? 男か!?」

と慌ててどんどん焼きを吹き出しそうになっている父を無視して、

「は? 何で?」と聞いた。


「ほら、5月くらいだっけか。おかーさんお弁当忘れたことあったべ? それ届けさ来たときに、記念館であのイケメンさんのこと見っけてたべや」

と口をもぐもぐさせながら母は答えた。


「あ、そーいえば、そったなことあったね~」


「だっはっはー。んだらおかーさんをキューピッドとして崇めねばならねーべ?

まんず、皿くらい洗ってけれ~。明日帰り遅くなるから洗濯物もヨロピクー」


それから数日間、なぜかわたしは母にこきつかわれまくった。くそう。



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